サムライ8八丸伝最終話「パンドラの箱」(今週のジャンプ感想)
お、終わってしまったーーーーーー!!
はい、ついに最終話のサムライ8です。 1年続かなかったかぁ・・・・・
これから先「面白くなっていく」可能性があっただけに、残念としか言いようがない。 短縮化の影響で いくつもの「まだ」が残されてしまったのも、仕方ないとはいえ残念。
ただ…短縮化されたとはいえ、ラストだけは(おそらく)当初の予定通りだったのではないかと推測してます。 つまり、物語は《八丸の死で始まって八丸の死で終わる》というね・・それは決まっていたんじゃないのかな。
第1話、いきなり「主人公の少年が死を選んで始まる」のは衝撃でした。 そして最終話も「主人公はこの世を去り、仲間たちは旅を続ける」という結末。
「主人公がこの世を去って終わるパターン」は珍しい訳じゃないにしても、八丸がこの世を去っても仲間たちはラスト「笑顔」。 これは意外な結末だった・・
ちっとも湿っぽくないし、お涙頂戴的な展開でもないし、実に「さわやか」。 極端に言えば「何事も無かったかのように」仲間たちの旅は これからも続いていく。 すごいアッサリ感・・・
この結びは(私にとっては)予想外で、最後は流星剣使って銀河を救って 仲間と笑い合ってアンとも仲良く・・的な結末を漠然と想像しておりました。 しかし「この結びがあってこそ《サムライ8八丸伝》だった」んだと・・・ようやく気づいたと言いますか。
なんというか・・八丸の物語は、流れ星が尾を引いて流れる間の、 つかの間の《一瞬》の物話だったんじゃないかと思いました。
(ま、その「一瞬」の長さが多少「短くなった」という事情はあったにせよ)
八丸って、偶発的に生まれて 父ちゃんによって助けられ守られて、生命維持装置に繋がって生きてきた・・ 「装置を外したら3分も生きられない」とも言っていた。 本来なら、生命維持装置を外れた時点で 人生残り時間3分だった…はず。
そして、父ちゃんとケンカした時、八丸はこうも言っていた・・
《1回でもいい・・もし自由に空を飛べるなら 死んだっていいって 思ったことあるか?》って。
八丸にとって「自由に空を飛べる」ことは、叶うなら死んだっていいと思うぐらいの「願い」だったんですよね。
そして、八丸のさらなる夢は「次の流れ星になること」。 体が弱くて外に出られなかった八丸にとって、宇宙を翔ける不動明王みたいになるのは「自分と真逆だからこそ」の憧れであり、「叶うはずもない夢」だった。
でも、その夢は「叶った」。
(連載開始前の予告編で、八丸は「流れ星が消える前に」とたくさんの願い事をする。おいしいものを食べたい、友達を作りたい・・・そして「侍になりたい」と)
あの時、《流れ星が消える前に》願った事の ほとんどは叶えられてるんですよね。
侍になって外に出られるようになったし、「自由に空を飛べるように」なったし・・ おいしいものをたくさん食べたし、リアルな友達も作ったし、師匠にも出会って運命の姫にも出会って宇宙に行って、初めて買い物もした。
外の景色を見ること、自由に出かけること、好きな物を食べること、友達と会うこと、買い物をすること・・我々にとっては「当たり前の日常」でしかないんだけど、八丸にとっちゃ全部が「非日常」だった。 全てが夢のようで、もし叶うなら死んでもいいと思うほどの「最高な幸せ」だったはず。
我々は その有り難さに気づいてないだけ。 でも、八丸はその有り難さをすご〜く感じて「これは当たり前の事じゃない」と思ってたと思う。
《自由に空を飛べるなら死んだっていい》・・・生命維持装置から離れて生きられる時間は、当初「3分間」だった。 だけど《時間とは相対的なもの》・・武神の配慮でその3分間は少し延ばされ、その時間を八丸は思いっきり「生きた」のだと思います。
(アタとの最終決戦・・八丸は自分とアンの周りだけ時間を進め、八丸とアンは成長した姿の「白き侍と立派な姫」となり、全ステータスが∞となって「流星剣」を使う)
どうやってラストまでに「達磨がかつて心眼で見た《立派な白い侍と姫》」に持っていくのかと思ってましたが「時の流れをズラす」・・その手があったかと;
本来は「少しずつ成長して辿りつく」予定だったかもしれないし、鍵の7人も「全員揃う」ところまで描くとか、ラスボス?カーラとの闘いまでいく予定だったのかな・・・と思うと、これまた残念。
ちなみに「鍵侍の7人」、苺、三打、五空、七志、竜、あと残り二人も「顔だけ」登場。 そうかぁ~・・この2人とも出会いたかったな。
で、鍵は「7人」なのに、八丸は「8」・・これもずっと気になってたんです。
最初っから「八丸は鍵の一人」と言われてきたし、それなら鍵は本当は「8人なのか?」とも思ってたんですが・・・・結局、八丸は鍵じゃなくって「パンドラの箱だった」という結末に。 八丸の「8」は、鍵番号の「8」を示していたのではなくて、「∞」を示してた。
1(いちご)から7(ななし)の7人の鍵に加えて、パンドラ「∞」の八丸。
八丸の役割は、点在する7人を引き寄せ、つなぐ役割だった。 そして、八丸は∞の存在になった・・
「∞」なんだから、その存在は大きいし永遠でもある・・ってのは分かるんだけど、肝心の「これから」に八丸が立ち会えないなんて・・なんだか寂しい。
でも、これまた「八丸らしい」結末だったと思うんです。 その「八丸らしさ」ってのは・・「独特の空気感」。
ここまで読んできて、ずっと思ってきたのが《主人公の八丸にもっと強烈な存在感が欲しい!》ということだったんです。
純粋で、世間知らずで、ふつうに弱い面もあるし強がっちゃうところもあるけど、すごく素直で優しくて、何でもすぐ吸収して覚えてく。 今思えば生き急いでいた感もありますが・・ とにかく「とってもいい子」なんですよね。 だけど、周囲の個性派達の存在感に押され気味といいますか・・ 「空気のような やや薄めの存在感」が気になっていたんです(時々ブツブツ言ってきたけど)。
だけど、最終話を読んだら「八丸ってのは空気だった」・・それが彼の強烈な個性だったんじゃないかとさえ思えてきた。いや、空気みたいなんじゃない…空気だったんだって。
《オレは宇宙を漂う波になるだけ》・・
理論的には「八丸は完全なH粒子になった」という事らしいけど、前に不動明王がこんな説明してましたっけ・・「H粒子はいたるところにある」、だけどそれを感じないのは「魚が水の中にいる自覚がないのと似ている」って。
今の八丸も「目には見えない」し、普段その存在を意識しないけど「いつもここに居る」。 息をするのに いちいち空気を意識しないように、当たり前のように八丸は一緒に居て「命をつないでくれている」。 空気のような存在になったと・・(正確には空気じゃなくて「宇宙を漂うH粒子」だけど)。
(物語の結び・・・達磨と花一、大人っぽくなったアン、苺ちゃん、三打と竜、五空と七志(それと早太郎と五空のお猿さん)が 八丸父ちゃんの墓前に報告をし、「さあ・・次なる旅へ 出発だ」「いざっ!!」と第16話の結びと同じ絵とセリフで完結する)
アンは成長した姿のままで(上手く喋れるようになってる)、すっかり美しく凛々しく頼もしくなって… 「物語のヒロイン」になりそう。 鍵侍達は皆でアンを守りながら「仲間探しの旅」を続けていくんだろうなぁ・・・ なんだか、この先の旅は面白そう。 この物語の本体は「7人の侍とアン姫」の冒険であって、八丸伝はその「前日譚」なのではないか・・と思ってしまうぐらいに。
(そういえば、「アンを守るのは八丸の役目だが、三打がそうなる可能性もある」という以前の達磨のセリフですが・・アレはこの「結末後」の伏線だったのかな? これからは「鍵侍の7人でアンを守っていく」のだろうから…)
とにかく「鍵の仲間を探す物語」は全然終わってはおらず・・・これから「7人の侍とアン姫」が銀河を旅して活躍するハズなのです。 どっちかというと目立つヒーローは「七人の侍」達であり、八丸は「目立たない陰の功労者」とでもいいますか・・
しかし、宇宙に点在していた彼らは元々「バラバラな小さな点」だった・・
そこに「八丸」という少年が 流れ星のように現れて、願いを叶えて・・銀河を救うために「7人の侍」をつないでくれた。 そしてすっと消えて・・・宇宙に溶け込んでいった。 大切なものを「ここ(心)」の中に残して・・・
八丸伝は、そういう物語だったのかと。 八丸の「空気感」も、そういう事だったのかなと・・ でも、八丸の存在がなければ「小さな7つの点」は繋がることも無かったんですよね。 銀河も救われなかった。 大切なものは、目立たない、目に見えないところにある…
「空気」といえば、大久保先生の絵の「空気」がいいんですよね・・透き通ってて、優しくて。
第2話の扉絵、見開きの「八丸が初めて見たこの世界」の絵、第15話の扉絵と八丸が「誓う」絵、第2巻65頁の「いざ」と言ってる絵・・・・いずれも柔らかで穏やかな「優しい風」が吹いてるんです。
岸本先生は風を「舞う木の葉」で表現されることが多かったけど、大久保先生の絵は「絵全体で」風が表現されてる。 そこから温かい陽射しや温度も伝わってくるようで・・・その「空気」が大好きでした。
もしかしたら、絵から伝わってくる柔らかで温かい「空気」は・・八丸を表していたのかも。
でも、もし 事前に「これは流れ星が夜空を流れる時間・・八丸に与えられた3分間の物語です」と知らされて始まってたら・・・もっと違う読者の反応があったのかも。 最近話題になったワニさんの話じゃないけど、「ラストはこうなる」と予告されてたら・・・人気は上がってたのかも、とかね。
だけど、あえてそうせず 後になって「こういう話だったんだ」と分かる・・そういうスタイルを選んだのは、岸本先生が第1巻で書かれてるように『スルメマンガ』として作られたからなのでしょうか。
噛めば噛むほど味が出る、いや・・・噛まないと味が出ない・・・そういう仕込みになってたのかと。
「死」で始まって、「死」で終わる・・・
第1話の死は壮絶で、途中に出てくる「父ちゃんの死」は涙と悲しみの雨だったし、アン兄さんの死や三打の両親の死も 悲しく辛いモノだった。
だけど・・最後の「主人公の死」は、清々しく爽やかで優しく、そして穏やかだった。
そこに在るのは「温かい日差しと優しい風」・・・そして「変わらない当たり前のような日常」と「これからも進んでいく時間」。
人間の一生はほんの「一瞬」・・・星が流れて消えるぐらいの「短い一瞬」。 だけど、その中を「精一杯生きる」八丸の姿があった。
食べることも外に出ることも嬉しくて、友達ができた事が嬉しくて、父ちゃん以外の人に優しくしてもらった事が すご〜く嬉しくて… アンに「今日は何作ってもらおうかな」と考えてる八丸の顔、ホント幸せそうでしたもん・・ 短い時間であっても、八丸にとっては長くて幸せな、夢のような時間だったと思います。
ガリガリの爪楊枝で、先端恐怖症で、心配性で、引きこもりで・・・最初は「叶うはずのない夢」ばかりだった。 八丸は、アタに「どう見るかは人による」「長い大層な肩書きがあるんだろーが オレから見ればただの親の仇」と言ってたけど、たとえ「無理」と思うような難題や困難があっても「どう見るか」で変わる・・・やってみなきゃわからない、思い切って躊躇しないで「やってみるじゃなくってやるんだ!」と八丸は教えてくれた。
「死」を通して伝えられたのは「精一杯生きる」ことだったのだと思います。
そりゃね・・個人的には、竜の「本当の名前」も知りたかったし、三打が「自分も鍵の一人だった」事を知った時のリアクションも見たかったし、苺ちゃんがどんな強い女侍になるのか見たかったなぁとか・・千さんやハガミチさんはその後どうしたのかとか、ロッカーボールは疑問だらけだし、マンダラの箱とか「もっと知りたい事」はたくさんあった。 色々ツッコミどころもあるけれど・・それはいま愚痴っても仕方ないし、そんなことより この作品で大切なのは それ以上に「八丸が残していってくれたこと」なんだと思います。 そして、今になってそれを感じてる・・ホントちょっとずつだけど。
たぶん…まだ私もサムライ8の「本当の面白さ」は全然分かってないと思います。 なにせ「スルメ」ですから・・ まだまだ「読む側」の自分が岸本先生の次元に達してないと言いましょうか(よく言えば自分もまだ発展途上)。 なので、時間をかけて、第1話から読みなおしてみようと思ってます。 「ゆっくりでよい」と・・
とりあえず・・
岸本先生、大久保先生、ありがとうございました!
八丸、ありがとう。猫の達磨と犬の花一は本当にいいキャラだったなぁ…
早太郎も可愛らしかった。 最後、皆と一緒で寂しそうじゃなくて良かった…
久しぶりに週一で感想を書けて・・楽しい時間だった。
☆大久保先生、岸本先生の「次回作」を本気で大いに期待しています!!!
懲りずに描いてね!!
☆長駄文、読んでくださって感謝。
☆読み終わって思う事、作品についてなど、ダラダラ書くかも。コミックス第5巻が出たら、その感想も書いて・・そこまでは。
☆「次回作」、岸本先生にはやっぱりご自分で絵を描いていただきたい。月一でもいいしジャンプでなくてもいいから・・ 岸本先生独自の世界観、セリフ回しは「先生の絵だからこそ」合うような気がするから。 大久保先生の絵は、もっとファンタジー的なお話の方がいいような(素人目線の意見すみません)
☆序盤、もっと話を早く進めてたらなぁ。 ここから先面白くなるのでは??と思えるところで打ち切りは残念。 素晴らしい星の風景、宇宙戦などアニメだったら面白かっただろうに・・(アニメ化想定してたんだろうなぁ)
☆岸本先生は「過去のノウハウ」に自信がある・・ような発言をされていたけれど、んー・・・それはNARUTOだからこそのノウハウであって。 設定もNARUTOとは違うし、時代も違う。 先生、「時はゆっくり流れとるでよ・・」
☆ 今後はたぶん・・ナルト好きブログ!の方にいると思います。 1つ直し中の記事があったり、たまに更新したり、報告があったりするので・・よろしければ覗いてやってください。
☆さて・・たこ焼きでも食べようかな?
☆サムライ8八丸伝最終話「パンドラの箱」(今週のジャンプ感想)
サムライ8八丸伝感想・考察ブログ!
2020/03/23
参加してきました。応援してくださった方ありがとう・・