サムライ8八丸伝第12話「誰のために、何のために」感想
「オレはここにいる人達を必ず護る!!」
・・うん、カッコいいぞ!八丸。 今週のサムライ8八丸伝は面白かった。
巻頭カラーで力入ってるし、八丸の戦う絵もよくて(アタに斬られた後に睨み返す絵は鬼気迫るものがあった)、それに何と言っても「岸本先生っぽい」演出があちこちで光ってた。
まずは・・・
・見栄と見得の話から。
さて、ここ数回なんとなく「物足りなさ」を感じてたんです。 八丸のカッコいい台詞が空回りしちゃってたり「八丸ならでは」のものを感じられなかったりとか・・
・・だけど、その原因を八丸本人が説明してくれた。
「侍の体を手に入れてオレは 自分のためだけに強がって 見栄を張るために強がって」いたんだと。
そうなんだよねぇ・・・ここ最近の八丸の「カッコつけたセリフ」って、見栄っ張りの強がりだった。 でも、今週のセリフは見栄張りじゃあなくって、歌舞伎で言うところの「見得」のようでカッコよかった。
なんで「歌舞伎の見得」なのかというと、実はこんな話がありまして・・・
6月に南座の歌舞伎(NARUTO)を観に行って、その時のパンフレットにジャンプ編集長・中野氏の言葉がありまして、それが「ジャンプの漫画を成立させているのはキャラクターの魅力で、極端に言うと《ストーリーがハチャメチャでも、毎週ページを開くとそのキャラクターがカッコいい台詞を言っていればいい》」と。そして、それが歌舞伎で言うところの「見得」なのだろうと・・そういうお話でした。
ま、ストーリーも出来ればハチャメチャじゃない方がいいんだけど、キャラクターがカッコいい台詞を言ってれば、たしかに決まるんですよね。 特に話の序盤なんて、どうしたって説明が多かったりで退屈なこともあるけど、そこで引っ張れるものがあるとしたら《主人公(あるいはそれに近いキャラ)の、見得を切るようなカッコいい台詞》なのかもしれない。 だから、八丸にももっとそれが欲しいなぁと思ってた・・でも、それも「うわべだけの見栄っ張りなセリフ」じゃあ響かないんですよね。
岸本・大久保両先生は、八丸にちゃんとカッコいい見得を切らせるために、「言葉が上っ面にならないように」・・・そこに至る過程を描かれていたんですねぇ。 最近の八丸がパッとしなかったのも、ひとつの「過程」だった・・・ 下げてから上げるのがお得意な、いかにも岸本先生らしい「計算」だったのかな。
それと、もう1つ岸本先生っぽいと思ったのが「岸本流・漢字使い分けの術」!
・守ると護る
「オレはここにいる人達を必ず護る!!」
・・の「護る」。 守るじゃなくって「護る」になってる。
一般的にはよく「守る」を使うけど、「守る」のほうは「その状態をしっかりそのままにする(Keepのイメージ)」とか、辞書によれば「手中に収めて離れないようにする、奪われないようにする、失わないようにする」意味が強いらしい。
・・たしかに、今まで父ちゃんが何度も言ってた「八丸は守られる側の人間だ」は、八丸を取られたくない、自分の手元から離したくない、今のままでいさせたいという意味が強かったのかも。 父ちゃんは、八丸を「守りたかった」。
で、今回の八丸が言ってる「護る」は、「中のものを外から守る、かばいつつ守る」ことらしい。 要するに護衛するとか、自分が盾になって「大切なものを守る」感じなんですね。 今回の八丸の「自分が盾になって守る」強い意志には、「護る」のほうがピッタリかもしれない。 八丸は、父ちゃん達を「護りたい」と思った・・・
(ちなみに、父ちゃんの「お前は守られる側の人間だ」も、今週は「護られる側の人間だ」になってますね。 これは「お前は泣き虫で怖がりだから武士になんかなれない、護る側にはなれない」という意味だったから、「護る」の字になっていたのかも)
そして、今週は 今まで父ちゃんに「守られる」側だった八丸は、今度は父ちゃんを「護る」側になっていく・・・その変化の過程が、セリフや漢字などの手段で上手~く描かれているのですが、もう1つの手段は「目」。
・開いた目と閉じた目
今回の登場人物たちの「目」を見ると・・・《目を閉じてる人、目を片方開いている人》とそれぞれでして、たとえば達磨は「スリープモード」。 達磨は元々眼は見えないけど、眠っちゃった事で助言もしないし、完全お休みモードなんですね。 アンも、八丸が斬られそうになった時に目をギュっと閉じてて、しばらくそのまま閉じていた。
・・つまり、今回「八丸が戦いながら変わっていく」過程で目を開けて見ていたのは、ほぼ《父ちゃんと八丸》に絞られる(と思う)。 《父ちゃんと八丸だけの世界》にスポットライトが当たってるかのような・・・そんな印象を受けます。
(ほぼ‥と言ったのは、ハガミチさんは離れたところで見ていたから。 でも、ほとんど関わってはいない)。
まずは、その「八丸の目」ですが・・・
(八丸をかばって倒れた父ちゃんを抱えて、八丸は過去を思い出していく)。
(毎度ながら雑な模写ですみません・・)
父ちゃんがいないって、泣いてた八丸・・・でも父ちゃんに、泣き虫を治すためには「オレは強いぞ!って笑って強がればいい」「強い八丸は大好きだ」と教えてもらって、さっそく「笑ってみた」・・・ 父ちゃんに心配させたくなくて。
・・幼い頃の回想は、泣き顔の八丸で始まって、笑顔の八丸で終わる。
開いてる目は最初と最後で逆になってますが、このあと八丸は左目に傷を受けて・・「右目だけを開けて」上と同じような顔になります。 そして一度はくじけそうになるけど、父ちゃんの「八丸、お前は強い子だ」の言葉で、昔を思い出し・・・昔のように父ちゃんのために強がって「笑顔」になる。
こうして・・・
八丸の目は「父ちゃんが守ってくれてた過去」を追っていく。
そして今度は「父ちゃんの目」。
八丸が戦いの中で“勇”を取り戻していく過程を「父ちゃんの目」が追っていきます。 八丸が戦う姿と「父ちゃんの目」が交互に描かれていくんですね。 だから、ここに描かれている八丸の姿は「父ちゃんの目が見た八丸」といいますか・・・読者の目と父ちゃんの目が重なるような感じで、父ちゃんと一緒に目頭が熱くなってくる。じわ~っとしてきてね・・・
で、こうして・・
父ちゃんの目は「八丸が護ってくれてる今」を追っていく。
はじめは閉じていた父ちゃんの目も、八丸が立ち上がったのに気づいて「右目だけ」をうっすらと開けて・・だんだん父ちゃんの目も大きくなっていって・・・父ちゃんの目にしっかりと「今の八丸」の姿が映っているのが分かる。 そして父ちゃん、最後には微笑んでいるような・・・ 二人とも同じ《右目だけ開いてる状態》になって、二人とも微笑んでいる・・・ 二人の目と心のシンクロがすごい。
そして・・・
八丸が言った「ごめん」と・・父ちゃんが言った「すまんかった」。
今まで八丸が嫌がっていた過去は「父ちゃんが守ってくれてた」。
そして父ちゃんが認めてなかった今は「八丸が護ってくれてる」。
あんなに嫌だった過去にあんな宝物があって、そして今を父ちゃんに認めてもらえて・・・これでもう八丸は「八丸ならではの、八丸にしかない」ものを見つけられるような気がする。
最後の2人の笑顔・・・特に父ちゃんの、穏やかな笑顔がなんとも優しい・・・
ふたりとも、今までもこれからも、ずっとお互いのために、お互いを守るために・・
☆長駄文、読んでくださって感謝。
☆とりあえずざっと書いてみましたが、来週はどんな展開になるんだろう・・
☆にしても、サムライ8は「片方の目が閉じてて、片方が開いてる」の描写がすごく多い(今までも)。何に繋がっていくのかなぁ・・・・
☆でも、アタもいいことは言ってくれてるんですよね; それを素直に聞いている八丸も偉い。
☆達磨、自動音声ガイドみたいなのが入るけど、ほんとロボットなんですねぇ・・達磨って、いったいどうなっているんだろう;
☆アタの言うバラすってのは「散体させる」ってことだったのかな。
(サムライ8八丸伝感想・雑考ブログ! 2019年7月29日)